授業料無償化がもたらす便乗値上げ

「高校授業料無償化」と聞くと、多くの保護者は「これで家計が楽になる」「子どもの進路の選択肢が広がる」と期待します。実際、制度の趣旨はそのとおりで、授業料の負担が軽減される意義は大きいものです。

しかし、千葉県が公表しているデータを丁寧に見ていくと、令和8年度から始まる所得制限無しの「授業料無償化」本格導入の裏側で、別の現実が進行していることが浮かび上がります。

千葉県総務部学事課の調査によれば、私立高校(全日制)の初年度納付金は、

令和7年度:平均 785,354円(前年比+1.4%)

令和8年度:平均 832,631円(前年比+6.0%、+47,277円)

と、わずか1年で約5万円、率にして6%も上昇しています。

さらに注目すべきは学校数の内訳です。

令和7年度 値上げ12校 据え置き42校
令和8年度 値上げ38校 据え置き 6校  

値上げ校は12校から38校へと急増しています。

学校側が挙げる理由は、人件費の増加・光熱水費など諸経費の増加施設・設備の充実(老朽化対策)などいずれも現実的で、理解できるものです。学校も企業と同じく、物価高や人手不足の影響を受けています。「値上げ=悪」と単純に断じることはできません。

しかし同時に、無視できない構造的な変化があります。

授業料無償化により、保護者の支払い負担は確かに軽くなります。ところがその結果、授業料という価格に対する“痛み”が家庭から見えにくくなります。

支払主体の性格が「個人」から「公費」に近づき、価格に対する抑制圧力が弱まるのです。

その環境変化の中で、初年度納付金は83万円を超え、しかも急上昇という現象が起きている。

これは、無償化によって生まれた“値上げしやすい構造”の中で、「学校が便乗して値上げしている」という疑念は避けて通れません。

投入された公費は学校経営者の利益でなく、保護者や生徒の負担軽減につなげなくてはいけません。

しかも、初年度納付金には、入学金・施設関係費・各種諸経費が含まれます。授業料は無償化であっても保護者の仮払いが必要です。

つまり、制度上は「無償」であっても、入学時点で80万円前後の現金が必要という現実は変わっていません。

さらに令和7年度は政治空白が多かったため、授業料無償化分の就学支援金や臨時支援金が未だに支払われていません。今回の衆議院選挙により3月になるとも言われています。

授業料無償化のはずが1年間仮払いをし続け、さらに翌年度分の仮払いが始まるという事です。

結果として、現金が用意できない家庭は「無償化」の恩恵を実感できず、「入学時点で断念」する可能性が残るという構造が残ります。

無償化は、本来「家庭の経済状況に左右されず、子どもが進路を選べる社会」を目指す政策です。

「公費を使う以上、その効果がどこに届いているのか」
「本当に、子どもと家庭の選択肢を広げているのか」

データが示しているのはこの問いを正面から議論すべき、という事実です。

令和8年度千葉県私立学校初年度納付金について/千葉県