「タダで渡した」と言う前に――物件調書が示す旧大和田小学校の現実

君津市の市長選挙を10月に控え、早くもネガティブキャンペーンが始まっています。政策を批判・議論することは大いに結構ですが、印象操作により市民を扇動することは汚いやり方だと思います。

市民の皆様に客観的に正しい情報を提供していきたいと思います。

君津市の旧大和田小学校の跡地活用について、「市が8億円を払って土地と建物をタダで渡してしまった」という声を目にすることがあります。旧大和田小学校の物件調書は君津市ホームページで公開されていますので、まず物件の実態を冷静に見る必要があります。

旧大和田小学校は、物件調書によれば、施設台帳上の面積が45,500㎡、登記地積の合計が34,017㎡という広い土地を持ち、建物も校舎8,352㎡、屋内運動場1,380㎡などを合わせると延床面積はおよそ9,800㎡を超える大きな施設です。学校としての役割を終えた今、この土地と建物をどう扱うかは、単純なイメージだけで判断できる話ではありません。

まず土地についてです。旧大和田小学校は市街化区域内にありますが、用途地域は第一種低層住居専用地域で、建ぺい率50%、容積率100%、絶対高さ10mという制限があります。つまり、自由に高層建築や大規模開発ができる土地ではありません。

さらに物件調書には、土砂災害警戒区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域、景観計画区域といった記載もあり、南東側には約15mの高低差を持つ急傾斜地があります。大部分は平坦地であっても、一部にこうした制約があることで、民間にとって使いやすい土地とは言いにくいのが実情です。

次に建物です。校舎や体育館が残っていると「建物付きだから価値がある」と思われがちですが、古い学校施設は、使い道がなければ維持費と解体費を伴う存在です。そして、物件調書には有害物質に関する重要な記載もあります。

まずアスベストについては、平成20年10月に実施したアスベスト含有率調査で、建物1の特別教室・教室棟・管理棟の一部から、アスベストの一種であるクリソタイルが検出され、アスベスト含有ありと判定されています。しかも、その検体はバーミキュライトを含有する検体とされています。

さらに、北西側の建物5(倉庫)と北側の建物7(倉庫)の屋根材に使われている波板スレートについても、外観からレベル3相当のアスベストを含有していると推定されています。加えて、目視調査では他に明確な所見はなかったものの、上記以外にもアスベストが含有されている箇所がある可能性は否定できないと記載されています。

PCBについては、受変電設備(キュービクル)内のトランスとコンデンサについて令和6年2月に調査を行い、いずれもPCB含有なしと判定されています。また、PCBが使用されていることが確認された照明器具については交換工事が施工済みです。ただし、こちらも物件調書では、上記以外にもPCBが含有されている箇所がある可能性は否定できないとされています。

つまり、この建物は単に「古いけれど建っているから資産」という話ではありません。解体する場合には、通常の解体費に加えて、アスベストの適正処理や追加調査が必要になる可能性が高く、PCBについても慎重な確認が必要な建物だということです。

さらに、敷地内には受水槽、受変電設備、単独処理浄化槽3基、プール、遊具、樹木、各種フェンスや門扉などの附属設備も残っています。

プールは消防水利に指定され、敷地内には廃止済みの旧水道本管も残置されています。下水道はなく浄化槽区域、ガスもなくプロパンガス区域です。つまり、「更地にして売ればいい」と簡単にはいかない条件がいくつも重なっています。

こうした条件を踏まえると、旧大和田小学校の全面解体には多額の費用がかかる可能性があり、閉校したまま保有し続けるだけでも、警備や草刈り、設備点検などで維持管理費が発生すると考えられます。

何もしなくても、税金による負担は続いていくのです。

だからこそ、施設を活用してくれる事業者に引き継ぐという判断は、単純に「タダで渡した」という話ではありません。現実には、解体すれば多額の費用がかかる、保有し続けても維持費がかかる、しかも土地には用途や災害の制約があり、建物にはアスベストやPCBの確認・処理という課題もある。

そうした条件の中で、どうすれば将来の市の負担を抑えながら、跡地に新しい機能を持たせられるかという政策判断なのです。

もちろん、公費が使われる以上、その妥当性や将来のリスク、事業の継続性については丁寧に検証されるべきです。それは当然です。しかし、その議論の出発点は、選挙のために市民を扇動することではなく、まず物件調書に書かれている事実を正しく共有することではないでしょうか。

同じ事実でも、「市が8億円払って大学にタダであげてしまった」とも言えるし、「8億円で大学を誘致し将来的な維持費と解体費を削減した」とも言えます。

市民の皆様には選挙に向けた印象操作に惑わされず、まずは物件調書にある事実を知っていただきたいです。

大和田小学校の物件調書はこちら→ 52860.pdf