産業廃棄物最終処分場について質問と答弁

初めての県議会一般質問が終わりました。議会ホームページから動画を見ることができます。

千葉県議会 本会議録画中継 (chiba.lg.jp)

長文になりますが、産業廃棄物最終処分場についての質疑と答弁を紹介します。県議会は一括質問ですがわかりやすいように一問一答方式の形に並び変えました。(正式な議事録ではありません)

今回の質問では、

内部保有水が土堰堤からにじみ出ていることを認めた。

という点が大きかったと思います。改善命令の発出をめぐっては、環境省の基準省令に違反しているという私と、違反していないという県の見解の相違を詰め切れませんでした。

環境省の基準省令では、「埋立地には、保有水等を有効に集め、速やかに排出することができる堅固で耐久力を有する構造の管渠、その他の集排水設備を設ける」と決められています。

今日行われた環境生活警察常任委員会でも、水が溜まってるということは「速やかに排出できる排水設備がない」となるのですが、執行部は「水は溜まってるが排水設備はある」という論理矛盾を強弁してきました。

改善命令を出す大義はそろっているのですが強硬な態度に違和感を覚えました。

以下に一般質問の産業廃棄物最終処分場の部分を掲載します。

須永

君津市内の産業廃棄物最終処分場について伺います。
君津市内には埋め立て容量426万立方メートルという、首都圏で最大規模の産業廃棄物最終処分場があり、現在第3期を増設しています。地元君津市も、君津市議会も一貫して増設に反対していますが、増設は進み、すでにちば眺望百景にも選ばれている大福山展望台からも処分場が見えるようになってしまいました。

この第3期増設事業では、3-1処分場、3-2処分場と構造が独立する二つの処分場を一つの事業として許可しています。構造が独立するなら、それぞれ別々の許可申請とすべきです。今まで二つの処分場を一つの事業として許可した前例はあったか、なぜ今回はそれができるのか伺います。

また、構造が独立する二つの処分場、一つの事業として許可申請を認めるのであれば、埋め立て開始の全体が完成した後に、一度に埋め立て開始を認めるべきではないでしょうか?埋め立てに関しては、別々に認めていますが、完成した部分のみを先行して稼働を認める法令上の根拠は何か伺います。

当該処分場の第1期処分場は、2001年3月30日、当時の沼田知事が退任される5日前に許可がされました。その後2012年、第1処分場は埋め立て地内の内部保有水が埋め立て区域外に流出する漏えい事故を起こし、廃棄物の搬入停止となりました。

千葉県は2012年に有効な改善策の実施を行政指導していますが、それから10年以上ポンプアップをしていても、いまだに水位は改善されず、第1期処分場の内部保有水は保有限界に近づいていると推測できます。

当然のことながら、産業廃棄物最終処分場は、廃棄物を入れるための施設であり、水をためられるようには作られていません。
水は土よりも元の形を保とうとする力が弱いため、処分場の土堰堤にかかる水平方向の圧力は、想定よりも高くなるのが当然です。わかりやすく言えば、現状は土で作ったダムのようになってしまっているということです。崩壊する危険性があると考えるのが自然です。

これらのことを踏まえ、第1期処分場については、改善命令を出すべきであると考えますが見解を伺います。

次に千葉県ホームページによると、第1期処分場において、自然流下水から高濃度の塩化物イオンが検出されています。
これは土堰堤底面に遮水シートがないため、埋立地内の内部保有水が流出し、自然流下水に含まれていると考えられます。内部保有数が自然流下水として外部に流出していることは、法令違反だと考えますが見解を伺います。

答弁

君津市内の産業廃棄物最終処分場についてお答えします。まず、二つの処分場を一つの事業として許可したことについてのご質問ですが、当該最終処分場は、平成28年12月に第3期増設事業として、二つの処分場を追加する計画で施設の変更許可申請書が提出され、県は平成30年8月に許可しています。

本申請については、二つの処分場の着工が同時期であること。浸出水の処理施設および調整槽を共用することなどから、一つの事業として申請書を受理し、廃棄物処理法に基づき許可したものです。なお本申請を除き、複数の処分場の設置を一つの事業として県に申請がなされた事例はございません。

次に完成した部分を先行して稼働する根拠についてのご質問ですが、当該事業は、二つの処分場のうち、先に整備を終える処分場をまず供用開始し、残りの処分場はさらに二つの工区に分けて供用開始する計画となっています。

廃棄物処理法に基づき許可を受けた施設は、同法第15条の2第5項に基づき、設置工事後に許可申請書に記載された設置に関する計画に適合していることを県が確認した後でなければ使用することができません。当該事業者はこの規定に基づき、先に整備を終えた処分場について、県の確認を受けて供用開始しているものでございます。

次に、第1処分場の改善命令に関するご質問ですが、県は産業廃棄物最終処分場について、その施設の構造や維持管理等が法令の基準に適合しない場合に、法に基づき、施設の改善を命ずることができます。
第1処分場では、施設の構造や維持管理について、基準の不適合や違反事項は認められません。

次に第1処分場の自然流下水に関するご質問ですが、自然流下水とは、埋立地内部において、土堰堤の法尻に設置した集水管で集水しているものであり、この水は浸出水の処理施設を経て放流されております。このため、自然流下水は埋立地の外部に流出することはなく、法令違反には当たりません。

須永(再質問)

産業廃棄物最終処分場について伺います。今までに複数の処分場の設置を一つの事業として県に申請され、許可された事例はないというお答えでした。前例のないことを、許可するというのは非常に珍しいなと思います。

その理由として、着工時期が概ね同じであることとか、浸出水処理施設た。共有することなどというのを理由と挙げてましたが、それらを共有すれば一つの申請でいいですよっていうことが明文化されているような法的な根拠はあるんでしょうか、お聞きします。

それと、完成した部分のみを先行して稼働を認めているというところの質問ですが、先ほどの答弁の後、計画で認められれば、工区はいくつでも細分化できるという理屈になってしまいます。そうすると、最初に完成した工区からどんどんどんどん営業を始めてその売り上げでもって次の工区を建設していくという自転車操業的なことも可能となってしまうのではないかと心配します。いったいでは工区はどこまで細分化が許されるのでしょうか、教えてください。

改善命令についての質問です。基準の不適合や違反事項は認められないという答弁でしたが、廃棄物の処理および清掃に関する法律第15条の2の3によればですね、産業廃棄物処理施設の設置者は、環境省令で定める技術上の基準に従い、当該産業廃棄物処理施設の維持管理をしなければならないと決められています。
つまりですね環境省令に従わなきゃいけないと書いてあるんです。

この環境省令の1条1項5号には、埋立地には、保有水等を有効に集め、速やかに排出することができる。堅固で耐久力を有する構造の管渠、その他の集排水設備を設けることと決められています。
埋立地の保有水を速やかに排出できていない集排水設備は、明らかに省令の基準に違反していると考えますが、どうでしょうか、お答えください。

次にですね、自然流下水の質問ですが、肝心なところを答弁されてないと思うのです。私は内部保有水が自然流下水に入ってますよねということを言ってるんですけども、そこのところを答弁では触れられていませんでした。確認します。自然流下水が集められて、浸出水処理施設にいっているのはわかります。その自然流下水には、土堰堤からにじみ出た内部保有水が含まれてますよね。確認です。

答弁

まず二つの処分場を1事業とする根拠に関するご質問ですが、本件につきましては、廃棄物処理法第15条の2の6第2項の規定により施設の変更許可を行ったものでございます。
工区の細分化に関するご質問ですが、工区の分割の妥当性については、埋立地の位置や規模、施工時期、施設の構造などから、事業の一体性を、法の許可基準に照らして総合的に判断するものと認識しております。

第1処分場の排水設備に関するご質問ですが、第1処分場に設置されている集排水設備の構造を基準に適合しており、保有水の水位が低下しないことは、埋め立てられた廃棄物が固結した状態となっていることが原因であると推定されております。
このため、現在県は事業者に対し、掘削等による埋立地の透水性の改善対策を早期に講じるよう求めているところでございます。

最後に、自然流下水に関するご質問ですが、自然流下水は埋め立て地の内部において土堰堤の法尻に設置した集水管で集水しているものでございますので、自然流下水に内部保有水は含まれているということになります。以上でございます。

須永

産業廃棄物最終処分場についてですが、今、自然流下水には内部保有水が含まれているという答弁をいただきました。であれば、土堰堤からにじみ出ているというのは内部のものがにじみ出ているんですから、にじみ出た先は外部ではないでしょうか?そもそも土堰堤ののり面に内部保有水が出ることは想定をされてないはずです。
この時点で明らかに通常とは異なる状態になっているということがわかります。

埋立地内の水位が下がっていない状態であるということは土堰堤に水平方向の圧力がかかっているということです。このままでは非常に危険があると思います。
2021年の7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害においては、28人の方が亡くなりました。起点となった盛り土の危険性については、2011年に安全対策を講じるように命じる措置命令を出すことを見送った経緯があります。
遺族は県と市を相手に必要な措置を怠ったとして損害賠償請求の裁判を起こしています。

君津市内の産業廃棄物最終処分場の第1期処分場も崩壊の危険性があります。それは今ではないかもしれませんが、子供たちの時代かもしれません。
今、改善命令を出すことが将来の危険性を排除することになります。ぜひ安全性を第1に考えた判断を強く求めます。